本研究の目的は、青果物流通過程において大量に発生している食品廃棄物の発生構造を解明し、その発生要因を商業論的な分析から特定し、その削減および再資源化のための政策課題を考察することである。最終年次である平成19年度の目標は、昨年に引き続き、卸売市場における食品廃棄物発生に係わるヒアリング調査、およびその分析、それを踏まえた政策課題の考察である。 このうち卸売市場へのヒアリング調査については、代表的な産地市場である鹿児島市中央卸売市場、宮崎市中央卸売市場で実施した。地場産の個人出荷品が大量に集まるこれらの市場では、これまでの研究を踏まえれば、売れ残りや荷痛みによる食品廃棄物の発生が深刻な課題であると予想された。しかし、実際には発生量そのものが少なく、市場関係者には必ずしも深刻な問題と認識されていなかった。それどころか、前者に至っては分別の徹底を図ることで、青果物残さの堆肥化リサイクルがかなりの水準に達しているとみられる。 これに対し、都市部にある大阪市中央卸売市場本場では、市場内への収集ステーションの設置を中心としたごみ対策が図られている。それは大阪市のごみ処理施策と連動した中で行われており、卸売市場単独で完結しようとするものではない。また、本研究のテーマの一つである「売れ残り」の発生と食品廃棄物発生との関係については、依然として不詳とせざるを得ない。 2年間の本研究を通じ、卸売市場の食品廃棄物問題について次の3点が指摘できる。第1に、この問題は、青果物流通全体における問題が卸売市場で発現しているということ。第2に、その削減や再資源化には、川上から川下までの役割分担を整理する必要があること。第3に、この研究もまた、卸売市場段階の水平的な事例の積み上げから、川上である産地と川下である総合量販店などを対象に含めた実態解明と分析が必要であること。
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