本研究の課題は、農薬・化学肥料の使用を抑えた栽培方法による農産物に対する消費者の評価を、「安全性」による部分と「環境への配慮」による部分に分離して評価することである。 今年度は新しいアイデアとして、米を対象にした選択実験と同時に、同じ回答者に別の財を対象とした選択実験をおこない、その結果を付き合わせるという方法を試みた。具体的には、「環境への配慮」のみを考慮するような財として「ティッシュペーパー(の古紙配合率)」、「安全性」のみを考慮するような財として「浄水器(の健康に関連した物質除去率)」についての選択実験をおこなった。米についての「有機栽培米」や「特別栽培米」を選択する傾向と、これら2種の財を選択する傾向の比較により、「安全性」「環境への配慮」の相対的な寄与を分析しようという試みである。 3つの選択実験からそれぞれモデルの推計をおこない、その結果を比較するという手続きをとった。ランダム・パラメータ・ロジット・モデルを用いて3種の選択実験データを計測し、個人パラメータ間の関係を分析したところ、米の「有機」「特栽」属性は、相対的には「安全性」よりも「環境への配慮」と大きな相関を持っているという結果が得られている。 今回の調査に際して大きな問題となったのは、中国産冷凍ギョウザ事件であった。この種の事件が大きく報道されている間は、アンケートの結果に影響が出る可能性があるため、今回は予定を多少ずらして、できるだけ調査時期を遅らせることで対応した。そのため現段階では、データ分析に当初の計画よりも時間をかけることができていない。今後、より明確な結果を出せるように、3種のデータをプールして計測できるようなモデルを構築し、分析を続けたいと考えている。
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