本研究は、農村における生態的ネットワークの形成の重要性を明らかにするために、生態的ネットワークに関連する事業に関して分析を行った。生態的ネットワークについては、主に鳥類の保全に関連する事業や取り組みを選定し、事業や取り組みを評価した。 第一に、新潟県佐渡市において、トキの野生復帰を支援する環境保全型農業の生産者団体であるトキの田んぼを守る会の会員を対象にして分析を行った。トキは水田周辺に生息し、水田の生物を採餌するため、トキの野生復帰を実現させるためには、環境保全型農業の進展が不可欠であり、本研究ではこのための要因を明らかにした。 第二に、シギ・チドリネットワークに参加している熊本県八代市の球磨川河口を対象として分析を行った。具体的には、八代市民に対して、環境評価手法の一つであるCVMを適用して、水鳥の生息環境を保全することを目的とした水質保全対策に対する経済評価を行った。 第三に、ラムサール条約湿地として登録されている宮城県大崎市の蕪栗沼・周辺水田を対象として分析を行った。蕪栗沼・周辺水田は、ラムサール条約登録湿地ではじめて「水田」の名称が付いた登録地である。水鳥の生息環境を保全するためには、当地域では冬期湛水水田が効果的であると言われている。本研究では、蕪栗沼周辺の農家を対象にして、CVMを適用して、冬期湛水水田を実施するための受取意志額について評価を行った。
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