本年度は、核磁気共鳴実験法(NMR法)および時間領域誘電反射法(TDR法)を用いて、異なる不飽和度の砂、シルト、粘土、黒ぼく土中の不凍水(0度以下でも凍結しない水)の量と温度の関係を測定し、土粒子の表面力と土中間隙中の水膜形状から不飽和土中の不凍水量を解釈するモデルを構築した。また、凍結を伴う不飽和土中の物質・熱移動についてまとめ、実験や数値計算を行う上での留意点や問題点を整理した。更に、数値計算の観点から、不凍水量一温度関係を表すのに適した関数型を提案した。これらの成果および解説は、国内外の雑誌にそれぞれ投稿中である。不凍水量の測定法については、国内、ロシアおよびアメリカの研究者らと現在検討を進めている。解析上の大きな問題点が明確になりつつあり、これまで/今後の実験結果の解釈に大きな影響を及ぼすことになると予想される。 次に、凍結過程にある土の熱的性質、溶質濃度、水分量を同時に測定できるよう、サーモTDRを作成し、様々な土質の不飽和土に対応できるよう調整した。また、サーモTDRを用いた、凍土中の不凍水量と氷量の同時測定の可能性にっいて検討し、結果を雪氷学会凍土分科会などで発表した。 新たに数10cm高さのカラムに対応した一方向凍結装置を作成し、既往の研究で多くの課題が残されていた、温度・水分条件の制御と測定精度について改良を進めた。この装置を用いて凍結過程における砂中の水分・熱移動が測定し、温度低下にともなう凍土の水分特性および透水係数の変化を明らかにした。実験結果については、現在、学会発表および論文投稿の準備中である。数値計算については、不飽和土中の水・熱・溶質移動計算ソフトHYDRUSについて、アメリカの開発者らと凍結現象を扱えるよう開発を進めている。次年度は、この実験装置にサーモTDRを組み合わせ、測定結果を1修正版HYDRUSで解析する予定である。
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