研究概要 |
わが国では食料自給率が低迷する一方,米の過剰基調が続いている。特に最近は,輸入農産物価格の急騰により国内における穀物増産の必要性が指摘されている。このようななか,水田輪作農業の普及によって米以外の穀物増産を図ることの意義はますます重要になりっっあるが,わが国の農地は麦類や大豆をそのまま栽培することが困難な排水不良水田が多く,安定した水田輪作農業を行うためには暗渠排水整備などの土地改良の実施が不可欠である。そしてこうした土地改良を経済的かつ効果的に進めるためには,低コストな技術を開発し現場に導入させていく必要がある。 本研究は,土地改良事業における暗渠排水工の低コスト化を目的とし,これまで国内において検討されてなかった間隔を20m以上とした本暗渠と補助暗渠を組み合わせた低コストな暗渠排水システムの地下排水能力を検証し,現場への導入が可能か評価するものである。 平成19年度は18年度に続き宮城県新蒲地区で施工した低コストなシステムの地下排水能力を評価するために,地区内の大豆栽培圃場において8月から11月にかけて降雨後の暗渠排水量,地下水位の変動,作土の土壌水分変動などを観測した。 その結果,当地区における低コストなシステムは従来のシステムと比べ,降雨後土壌が過湿な期間が短く,排水口かが優れていることを確認した。よって,このシステムが土地改良事業に導入できる可能性は高い。また,本システムは経年変化によって排水機能が低下した暗渠排水の更新に有効と考えられたため,暗渠排水整備後およそ20年が経過した水田で試験施工を行った。 次年度以降は,本システムの排水効果を引き続き検証していくとともに,本システムが機能の低下した暗渠排水の更新技術として有効であるか検討する。
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