研究概要 |
わが国では食料自給率が低迷する一方, 米の過剰基調が続いている。また最近は, 輸入農産物価格の高騰等によって国内での穀物増産の必要性が見直されつつあり, 水田輪作農業の普及によって米以外の穀物増産を図る意義はますます重要になっている。しかし, わが国には麦類や大豆をそのまま栽培することができない排水不良水田が多いため, 暗渠排水整備などの土地改良が必要である。そしてこうした土地改良を経済的かつ効果的に進めていくためには, 低コストな技術を開発し, 現場に導入していく必要がある。 本研究は土地改良事業における暗渠排水工の低コスト化を目的とし, 間隔を20m以上で設置する本暗渠と補助暗渠を組み合わせる低コストな暗渠排水システムの排水効果を明らかにし, 現場への導入が可能か評価するものである。 平成20年度は, この低コストなシステムが, 暗渠排水の機能が低下し排水性が悪化した圃場の再整備に有効であるかどうかについて検討を行った。試験地は山形県鶴岡市内の低平地水田地帯における暗渠排水整備後23年が経過した転作田である。調査は, 降雨後の暗渠排水量, 地下水位の変動, 作土の土壌水分変動などについて行った。 調査の結果, このシステムの整備を行った水田は, 未整備の圃場と比べ, 暗渠排水量が大きく, 地下水位の低下も早いことが認められた。また, 作土の土壌水分の減少も早いことが確認された。 したがって, この低コストなシステムは, 暗渠排水の機能の低下によって水田輪作が困難になっている圃場の再整備にも有効な工法であると考えられた。
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