研究概要 |
北海道東部斜網地域の大規模畑作地帯は,国内を代表する畑作畜産地域であり,我が国の食料生産に重要な役割を担っている.その一方で,生産環境の悪化に伴って,河川・地下水の硝酸汚染や土壌侵食に伴う土砂流亡による水質悪化が顕在化しており,早急な対策が求められている.農業流域における汚濁負荷流出抑制対策の一つに,農地と河川との間に緩衝帯となりうる林地や湿地を保全・復元し,河川への汚濁負荷流出を抑制する方法がある.北海道東部には河畔緩衝帯が現存しており,これらを適切に管理したり,保全・復元することで,水質汚濁が軽減できると考えられる. 本研究課題では,北海道東部斜網地域に位置する網走市東部,東藻琴村,小清水町の畑作地域を対象に,河畔環境が異なる複数の小流域河川において水質水文調査を実施し,その結果から,水質浄化機能に必要な河畔緩衝帯の幅を流域レベルで評価するものである. 本年度は,大規模畑作地帯に現存する河畔林に着目し,河川周辺の土地利用と河川窒素濃度との関係を検討した.なかでも,流域内の農地面積と河川周辺の林地面積の比と,河川窒素濃度との関係について明らかにした.土地利用が異なる21流域を対象に,8月,9月,10月に河川の水質水文調査を実施した. 本年度の研究成果から,河川周辺の林地面積に加えて,後背地である畑地面積を勘案した指標(LU)を新たに定義し,河川窒素濃度との関係を検討したところ,両者の間には負の高い相関が得られた.このことから,本地域において土地利用の面から水質保全対策を考える場合,河畔林の幅や面積に加えて,後背地の畑地面積を加味する必要があることが明らかになった.
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