研究概要 |
本研究は、市町村マスタープランの策定を支援することを想定し様々な農地利用に対する需要を予測しながら将来の農地利用をシミュレーションする方法を開発することを目的としている。このうち本年度は、離農が進み耕作放棄地が増加する一方で、借地により規模拡大を志向する農家が少なからず存在することに注目し、それら農家の借地拡大行動分析を行った。素材として、新潟県頚城丘陵地域で行ったアンケート調査結果をもとに、農家がどのような条件で借地を発生させようとするのか、また、条件を変化させた場合に借地が起こる確率がどの程度変化するのかを選択実験手法を用いて分析した。農家行動を規定すると考えた条件には、米価、小作料の水準、圃場条件、中山間地域等直接支払制度の助成額を設定した。その結果、農家は第一に米価に強い正の影響を受けて行動していることが明らかになった。続いて小作料や圃場条件には負の影響を受けており、直接支払制度などの助成金に対しては米価下落時にその影響が現れることが明らかとなった。しかし,こうした助成制度に対する反応は3ha以上の拡大意向を有する農家に顕著であり,仮に借地拡大を誘導しようとする場合には,より拡大意向の高い農家に対象を絞った加算の仕組みが有効であると考えられた。これらの成果を論文として投稿し公表した。 また、本年度はこれまで構築してきたマイクロシミュレーションモデルの再検討を行い、農家行動モデルを導入しない基本モデルの精緻化を図った。その結果、労働力推計部分を改良し世代交代を考慮した予測期間20年に及ぶモデルを策定した。
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