研究概要 |
本研究は,市町村マスタープランの策定を支援することを想定し様々な農地利用に対する需要を予測しながら将来の農地利用をシミュレーションする方法を開発することを目的としている。このうち本年度は,農地利用の多様な担い手の一つとして集落を基盤とする生産組織に注目した。新潟県の県境,耕境に位置する集落において畑作や加工を中心に活動を展開してきた農事組合法人の事例から,所有者の高齢化や他出に伴う耕作放棄地を,コミュニティを基盤とする生産組織がカバーするという形態を想定し検討した。ヒアリング調査の結果から借地が発生する要因を整理したところ(1)経営所得安定対策,農地・水・環境保全向上対策などの助成金を活かした仕組みづくり(2)時間単位で労働力を確保する仕組みづくり(3)圃場整備などの費用を法人が負担するなど所有者が農地を出し易い仕組みづくり,などが上げられた。また,地形図や空中写真などを用いて事例法人の借地拡大行動を整理したところ,農地条件(用水の確保や農道の有無)に加えて不在地主の農地を積極的に集積していったことが明らかとなった。これらの結果をもとに,1995年,2000年,2005年の農林業調査票データ(統計法による利用申請に基づき承認を得ている)を用いて,シミュレーション・フローおよびパラメーター(推移確率)の検討を行い,コミュニティを基盤とする生産組織が耕作放棄地をカバー(借地拡大)するというシミュレーション・フローを基本のモデルに付加し精緻化を諮った。
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