研究概要 |
佐賀平野の干拓地水田(水稲-麦-大豆の1年2作の輪作)において,冬季の麦芽大麦(12月初旬播種,5月中旬収穫)と夏作大豆(7月中旬播種,11月下旬収穫:3年毎の転換畑)を対象として,高さ約3mの観測マスト上に温・湿度計,純放射計および超音波風速計,IRGAを設置し,渦相関法により,CO_2フラックスおよび熱収支測定を行った. 観測の結果,大麦畑および大豆畑のCO_2フラックスの季節変化をそれぞれ明らかにした.大麦畑の日中のCO_2フラックス(光合成同化量-生態系呼吸量)は,播種後120日後には,約-2.0mg-CO_2m^<-2>s^<-1>に達し,収穫前には約-0.5mg-CO2m^<-2>s^<-1>となった.夜間では,生育初期には約0,1mg-CO_2m^<-2>s^<-1>で,生育後半では約0.2mg-CO_2m^<-2>s^<-1>にあった.一方,大豆期では,8/30と9/7の台風通過時に著しく茎葉が損傷したことを受け,一時的な低下がみられ,その後にやや回復成長した.播種後120日後に約-1.7mg-CO_2m^<-2>s^<-1>,収穫期には専ら放出となった.また夜間のCO_2フラックスは,生育初期には約0.1mg-CO_2m^<-2>s^<-1>,生育期後半では約0.2mg-CO2m^<-2>s^<-1>に達した. 大麦畑および大豆畑のNEEの季節変化とその栽培期間の積算値を求め,各生態系におけるCO_2ベースの炭素収支量を明らかにした.大豆畑では,177g-C/m^2の吸収となった(ただしこの値は,通常年よりかなり小さいと考えられる(収量で平年比48%(佐賀県))).本生態系における年炭素収支は,大麦期:-508g-C/m^2,大豆期:-177g-C/m^2,非耕作期:+2768-C/m^2となり,収穫物としての持出し(大麦:-121g-C/m^2,大豆:-43g-C/m^2)を考慮し,年間では-245g-C/m^2と若干の吸収側にあることを示した(非耕作期は,大麦生育初期と大豆生育末期から推定した値:ただし対象圃場では,麦稈・大豆残滓ともに鋤込施用された)
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