マイクロ波照射処理・外部加熱処理および未処理のナタネ・ヒマワリ種子の内部構造を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。その結果、ナタネでは未処理の種子細胞内で確認された脂質顆粒体周辺の構造体が、マイクロ波処理および外部加熱処理を受けた種子では破壊され、脂質顆粒体においても一部破壊されていることが確認された。その破壊の度合いは、マイクロ波処理された種子の方が外部加熱処理よりも大きい結果となった。さらに、それぞれの処理した種子の圧搾を行った結果、マイクロ波処理による種子の圧搾率が最も高い値を示した。これらのことから、マイクロ波処理により脂質顆粒体周辺の微細構造が破壊され、その結果、圧搾率が向上したことが明らかとなった。さらに、マイクロ波による種子細胞内部までの加熱効果により、種子細胞内の酸化酵素(リパーゼ)が死活化され、油の長期保存中において酸敗を防ぐ効果があることがわかった。以上のことから、マイクロ波処理は、油糧作物をバイオマス資源として利用する上で最も効果的な加熱手法であることが明らかとなった。しかし、ヒマワリでは収穫乾燥後、保存中に外皮に水分が吸着され、マイクロ波を照射した際に多くのエネルギーが種皮の水分に吸収される傾向が見られた。そのため、マイクロ波による種子内部までの加熱が十分に起こらなく、脂質顆粒体周辺の微細構造の破壊ならびに酸化酵素の死活化について十分な効果が得られなかった。そのためシングルモードマイクロ波を利用した効率的なマイクロ波照射手法の開発を行っている。
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