植物の光合成機能の環境応答を生体組織・器官レベルで理解することが重要であると考え、生体内のマクロな栄養動態を可視化する研究を展開してきた。所属研究グループ(ポジトロンイメージング動態解析研究グループ)では植物中の炭素動態の可視化にこれまでに成功しており、可視化された画像データをもとにした光合成および光合成産物の輸送・分配の定量的な解析が急務であった。本研究では葉における炭素動態を画像解析することで、光合成における「二酸化炭素固定」および「光合成産物送り出し」の定量を試み、さらに解析領域の限定しないPixel-bv-Pixel画像解析法により、植物葉の光合成能を示す機能画像を構築することを目的とした。これにより、測定環境下における植物葉の"機能の可視化"が可能となり、定量的な機能画像は植物分子イメージング研究を実現するものである。 実験は原子力機構高崎量子応用研究所のPositron Emitting Tracer Imaing System (PETIS)を用いて植物体内の11Cの動態を撮像し、新たに構築した光合成コンパートメントモデルを用いて解析を行った。供試植物葉に11CO_2を供給して光合成プロセスを撮像して実データを取得し、既存の装置を用いた計測結果や解析誤差などにより、生理モデルの正当性を評価した。また、同一個体で光条件や温度といった環境条件を変化させて実験を行い、光・温度環境に対する光合成機能の応答を本手法により解析した。その結果、葉における「二酸化炭素固定」および「光合成産物送り出し」の機能分布の環境応答様式が明らかになった。
|