平成20年度はプロラクチン放出ペプチド(PrRP)の摂食促進作用に関わる因子を特定するとともに、その作用脳部位の特定を試みた。また、ニワトリヒナの新規摂食促進因子の探索を進めた。 脳内摂食調節因子は単独で摂食行動に影響を与えるものはなく、多数の調節因子による相互ネットワークが形成されているとされている。そこで、PrRPの摂食促進作用に関わる因子の特定を行った。まず哺乳類で摂食促進作用を仲介するといわれている一酸化窒素との関係を調べた。ところが、予備実験の段階で一酸化窒素はヒナでは摂食を抑制することを見出したため、PrRPと一酸化窒素の関係性を見出すことができなかった、次に、オピオイド神経系およびノルアドレナリン神経系との関係性を調べたが、PrRPはこれらとも関係がないことが明らかとなった。両神経系は、ニューロペプチドYやβ-エンドルフィン、ガラニン、ソマトスタチンといった他の脳内摂食促進因子と関係があり、PrRPだけがその関係性が見られなかったため、PrRPの摂食促進機構はこれまでにないまったく未知のものである可能性が示唆された。なお、その他の摂食促進因子との関係を調べるため、新たな因子を探索したところ、上記のガラニンとソマトスタチンがヒナの脳内摂食促進因子であることを見出した。 次に、PrRPによって活性化される脳部位を特定するために、Fosを標的とした免疫組織化学法を実施したが、現段階では特異的なFosの存在を確認することができていない。この原因は免疫組織化学法の技術面にあると考えられるため、本実験に適した実験条件を確立する必要がある。また、作用部位の特定のために免疫組織化学法以外にも脳局部投与法を確立した。
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