研究概要 |
ルーメンバクテリア、Streptococcus bovisのglyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenaseの遺伝子と転写調節の解析 Streptococcus bovisは濃厚飼料給与時にルーメン内で急増し、乳酸生成を増加させてルーメンアシドーシスを引き起こすことがあるので、その増殖および糖代謝調節の問題は重要と考えられる。本研究では、還元当量の生成反応を触媒するglyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GAPDH)に着目し、その分子生物学的特性を調べた。先ず、GAPDH遺伝子(gapN)のクローニングを行い、GAPDHは476個のアミノ酸残基から成り、その推定分子量は51,173Daであることを明らかにした。プライマー伸長解析を行い、gapNの転写開始部位は一箇所であり、開始コドンの24bp上流に位置することを明らかにした。ノーザンプロット解析において、gapNに特異的なプローブとハイブリダイズさせた場合、およそ1.5kbの単一のバンドが検出された。このバンドの大きさはgapNオペロンの長さと一致することから、gapNはモノシストロン性の転写様式であると考えられた。大腸菌を用いて作製したリコンビナントS.bovisGAPDHは、NAD^+よりもNADP^+との特異性が高かったことから、条件によってはNADPH生成も行なう重要酵素かも知れない。GAPDH活性の異なる種々のGAPDH過剰発現株を作成した。GAPDH過剰発現株および親株をグルコース培地で培養したところ、これらの菌株間で増殖速度には、ほとんど差がみられなかった。また、GAPDH過剰発現株の乳酸とギ酸の生成割合も親株の場合と違いがなかった。GAPDHの過剰発現が発酵パターンに及ぼす影響は小さいと考えられた。
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