研究概要 |
放牧草地における草量の空間的不均一性に草種の違いが及ぼす影響について,ケンタッキーブルーグラス(KB)とシロクローバ(WC)を例に,それらの単植区を組み合わせた草地を用いた実験を行い,検討した。 KBおよびWCそれぞれの単植区を組み合わせ,それらの面積比が異なる3草地を造成した。平均体重200kg程度のホルスタイン種去勢牛の2頭群を3群用いて,1週間の放牧試験を3回行った。各試験の開始2週間前に,供試草地を高さ7cmに刈りそろえた。各試験直前から終了後までの毎日,3草地の両草種区で50点ずつ,ライジングプレートメーターを用いて圧縮草高を測定した。圧縮草高からの草量推定式を両草種区で作成し,草量を推定した。各試験の前に植生調査を行った。以上の調査と同時に,牛群の摂食行動の調査が,各期間の放牧開始後1,3および5日目に,摂食行動が集中的に見られる朝夕各4時間行われた。その結果,同一試験期間内において牛群の各草種区に対する選択性は安定していた。従って,各試験期間内の各草種区での8時間あたりの摂食時間の平均値に牛群の頭数を乗じ,各草種区の面積で除した値を放牧圧と見なした。 草量の平均に対しその標準偏差は両草種区で正の関係を示し,KB区でやや大きな傾きを示した。草量の平均とその変動係数の関係は,KB区で無相関,WC区で負の相関を示した。放牧圧と標準偏差は,両草種区で相関しなかった。放牧圧と変動係数は両草種区で正の関係にあり,その回帰式も類似していた。以上より,草量の空間的不均一性は平均草量との関係においてKB区とWC区の間で異なり,草種の違いによる影響が示唆された。一方,両草種の平均草量の分布域が完全には一致しなかったため,明確な結論を得るにはさらにデータを蓄積する必要がある。
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