研究課題
放牧草地では草量に空間的不均一性が生じるが、その草地の生産性や持続性に及ぼす影響は無視できない。放牧草地生産モデルに「草量の不均一性」をパラメータとして導入することで、モデルを全体の挙動をより実際に近づけることが可能と考えられる。そのためには、草量の不均一性の異なる条件下における動態、および生産性との関係を明らかにする必要がある。草量の不均一性の短中期的な動態、あるいは放牧圧との関係について報告があるものの、草量の不均一性の動態と草種との関係および一次生産量への影響は明らかでない。本研究の目的は、「草量の不均一性」を取り入れた放牧草地生産モデルの構築に必要でありかつ現在不明である部分、すなわち、異なる植生条件における草量の不均一性の動態、および草量の不均一性と一次生産の関係について明らかにすることである。加えて、これらの結果を踏まえ、放牧草地生産モデルに「草量の不均一性」を取り入れることの可能性および重要性について検討する。平成20年度は,草量の空間的不均一性と一次生産の関係の解明のため平成18年度から行っている以下の試験を継続した。シバ優占草地に放牧圧の異なる3牧区(それぞれ1ha)を設け、牛群(黒毛和牛繁殖牛)を連続放牧し、各牧区において以下の調査を行った:(1)放牧前(4月下旬)から放牧終了(10月上旬)まで、1週間おきに100点で草量を非破壊的に測定した。測定にはライジングプレートメータを用いた;(2)それぞれの牧区に5つプロテクトケージを設置し、3週間おきにケージ内の草量を測定し、移動させた;(3)放牧開始から放牧終了まで、2週間おきに供試牛の体重を測定した。一般線形モデルを用いた解析の結果、草量の不均一性の草地の一次生産量に対する効果は有意ではなかった。この点は昨年度までのデータを用いた結果と食い違っており、さらに解析を進めた後公表する。
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目本草地学会誌 54
ページ: 134-140