乳牛の特徴は乳糖合成の基質であるグルコースを乳腺へより多く配分するために起こる乳腺以外の組織でのグルコース節約機構にある。その機構の一つとしてインスリン感受性の低下が上げられる。一方、脂肪組織から分泌されるアディポネクチンはこのインスリン感受性に関与するホルモンである。このため乳量調節にはアディポネクチンとレプチンが関与するという仮説を立てた。アディポネクチンは泌乳期で乾乳期に比べて低い発現量であり、ウシの泌乳時のグルコース代謝に深く関与することを示唆するものであったという昨年のデータを元に本年度は血中アディポネクチン濃度測定法についての検討を行った。アディポネクチンのアミノ酸配列を元に抗原ペプチドを設計しウサギ、及びニワトリで抗体を作成した。得られた抗体はペプチドには高い力価を示すものの、アディポネクチンには反応を示さなかった。そこでアディポネクチン自体を抗原とし、引き続き2羽のウサギによって抗体の作製を行った。得られた抗体はアディポネクチンに高い反応を示した。今後、一方の抗体をコーティングし、もう一方をビオチン標識することでアディポネクチン濃度測定のためにサンドイッチELISA開発を行っていく予定である。これら一連の結果の一部を学会で公表した。
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