本年度は、クローン胎子を受胎した妊娠牛(クローン受胎牛)の分娩時胎盤において遺伝子発現が亢進していたエストロジェンサルファトランスフェラーゼ(SULTIEI)、ならびに正常であったエストロジェンサルファターゼ(STS)およびアロマターゼ(CYP19)の発現部位をin situ hybridizationあるいは免疫染色により解析するとともに、これらの遺伝子を発現していた二核細胞数をカウントした。また、分娩時胎盤におけるプロスタグランジン(PG)合成関連遺伝子(COX-2、PGES、PGFS)の遺伝子発現量を解析した。 1.SULTIEIは胎子胎盤における二核細胞において特異的に発現していた。STSおよびCYP19は二核細胞と母胎盤における上皮細胞で発現していた。分娩時の胎盤における二核細胞数は、クローン受胎牛と対照牛の間で差はみられなかった。 2.クローン受胎牛の胎子胎盤および母胎盤におけるCOX-2およびPGFSの遺伝子発現量は対照と比較して差がなかったが、クローン受胎牛では胎子胎盤におけるPGESの発現量が有意に低下していた。 以上の結果から、クローン受胎牛の分娩時に血中の活性型エストロジェン濃度の上昇を妨げているSULTIEIが二核細胞に特異的に発現していることが示された。また、クローン受胎牛では、分娩時に胎子性コルチゾルの分泌を促すと考えられているPGE2を生産するために必要なPGESの発現量が少ないことが示された。
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