人を含む大型ほ乳動物や鳥類は、寒冷環境に対し、骨格筋によるふるえ熱産生および代謝性熱産生(非ふるえ熱産生)によって体温を維持する。すなわち、骨格筋は動物の運動機能のみならず代謝制御、恒常性維持に寄与する。骨格筋による熱産生機構は筋の成長に伴って発達する。骨格筋の熱産生機構が発達する成長時期のニワトリヒナに寒冷刺激を与えると、骨格筋における著しい熱産生反応を誘導できる。このとき、量的な変化として骨格筋肥大、質的な変化として筋線維型の遅筋化、を同時に観察できる。骨格筋の量的質的変化は、運動機能、代謝制御、恒常性維持、および食肉生産へ影響する。本試験では、骨格筋の量的変化、質的変化に対して、それぞれ、ミオスタチン、PGC-1α遺伝子が関与することを明らかとした。さらに、これらの遺伝子発現の変化は急激かつ可逆的であり、厳密な発現時間制御と発現量制御がおこっていることを示唆するデータを得だ。次に、これらの遺伝子発現の厳密な発現制御に関与する因子について探索を行い、候補因子をいくつか同定した。一方、ニワトリ骨格筋に局所的かつ限定的に遺伝子を導入するためにエレクトロポーレーション法を選定し、骨格筋組織の成長を妨げず、組織への損傷を極力へらし、かつ遺伝子発現を最大にするエレクトロポーレーション条件を確立した。そこでエレクトロポーレーション法を用い、確立した条件下で候補因子の導入を行い、骨格筋の量的質的変化誘導について解析を行っている。さらに細胞培養系を用いin vitroにおけるシグナル系再現実験を行っている。
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