フィロウイルス(エボラウイルスおよびマールブルグウイルス)の感染は、本ウイルスの細胞侵入を担う表面糖蛋白質GP蛋白質をエンベロープとしたシュードタイプウイルスを代替として用いた。シュードタイプウイルスのゲノムにはレポーターとして蛍光蛋白質(もしくは細胞膜蛋白質)の遺伝子が組み込まれているので感染の検出は容易である。 フィロウイルスが感染しにくいとされるJurkat細胞にヒト肝臓cDNA libraryを発現させ、上記のシュードタイプウイルスの感染性が上昇するようなcDNAの探索を行った。エボラウイルス・マールブルグウイルスのどちらのGP蛋白質を用いた場合もカルシウム依存性レクチンのLSECtinという分子を感染性を上昇させる分子として同定した。cDNA libraryを発現させる細胞としてK562細胞(やはりフィロウイルスが感染しにくい)を用いた場合も同じであった。LSECtin分子は主に肝臓やリンパ節の類洞内皮細胞に発現しているが、フィロウイルスはマクロファージや肝細胞を含めた様々な細胞に感染するため、本ウイルスは感染標的によって異なる分子を侵入に用いていると考えられた。 次にヒト由来細胞株(HeLa細胞・HT1080細胞)でマウスを免疫し、上記シュードタイプウイルスの感染阻止を指標としてハイブリドーマをスクリーニングしたが、感染を阻止するような抗体は得られなかった。 18年度の結果も含め、フィロウイルスの感染に関わりうる分子としてTyro3ファミリー・C型レクチンがあることが分かったが、これら以外にも未同定の分子があることも分かった。GP蛋白質による免疫沈降など、他の実験方法も用いる必要性があると考えられた。
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