研究概要 |
1.分子シャペロンによる乳腺上皮細胞のアポトーシス抑制作用及び乳合成活性持続作用の解析 分子シャペロンは熱により誘導され、細胞を熱ストレスから守るタンパク質として発見されたが、様々な細胞機能(タンパク質のフォールディング、品質管理、輸送、酵素活性の制御等)に必須なタンパク質であることが解明され、近年はアポトーシス抑制因子として注目されている。そこで、このアポトーシス抑制機能に着目し、乳腺上皮細胞に於いて分子シャペロンの発現を誘導することにより、アポトーシスを抑制し、乳合成活性を持続するという発想に至った。本年度は、ウシ乳腺組織及び乳腺上皮細胞における低分子量分子シャペロンの解析を行った。 低分子量分子シャペロン(HPS27, HSP20, alpha-B-クリスタリン)は組織により発現量が異なるが、乳腺での発現は不明であった。そこで、RT-PCR法によりそれらのmRNAの発現を解析したところ、乳腺組織および乳腺上皮細胞に於いても3種類の低分子量ストレス蛋白質の発現が認められた。更に培養乳腺上皮細胞における解析により、催乳ホルモンであるプロラクチンがHSP27の発現及びリン酸化を亢進することを見出した。これらの知見は分子シャペロンHSP27が乳腺上皮細胞の分化及び乳合成に関与することを示唆する結果であり、次年度からアポトーシス抑制因子として機能するかを解明する予定である。 2.新たな乳腺上皮細胞のアポトーシス抑制に関わる因子の探索(サブトラクション法及びDNAマイクロアレイ法による解析) 泌乳前、中、後期の乳腺組織からmRNAを抽出し、泌乳前・中期と比べて後期に発現量が大きく変動する因子を1次スクリーニングの候補因子とした。現在、得られた候補因子について、乳腺上皮細胞の培養系(増殖、分化、アポトーシス誘導時)での発現動態を解析中である。
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