研究概要 |
ウシMHC (BoLA)遺伝子領域に存在するMHC遺伝子のうち、未だ単離されていないTAP1,TAP2,クラスIのcDNAの単離を行い、TAP1およびTAP2のcDNAクローニングに成功した。TAP1は高度に保存されていて多型が存在しない可能性があること、およびTAP2には多数の多型が存在することをはじめて明らかにした。TAPの多型の簡便な検出法を今後開発することで、クラスIIb領域も視野に入れたM且C全体の疾患との相関性を検出することが出来るようになり、新たな疾患の原因遺伝子の特定につながる可能性がある。 また、高度な多型性を有することが明らかになっていながら、未だタイピング法の確立されていない、BoLA-DQA1およびDQA2遺伝子のPcR-Sequence based typing (PcR-SBT)法の確立をめざし、DQA1のタイピング法を完成させた。この方法を用いて、牛白血病および乳房炎の発症と抵抗性を規定する対立遺伝子を見いだし、それぞれ特許出願を行った。また、代表的なウシ品種におけるDQA1の対立遺伝子頻度を明らかにし、BoLAクラスIIハプロタイプの品種間の類似性の程度を示すことができた。これは、様々な疾患と関連するMHCハプロタイプを検出するための基盤情報となる。さらに、DQA1遺伝子のヘテロ接合度が著しく低く抑えられている事を見いだした。このことは、ウシ集団の多様性を減少させる結果となる可能性があり、今後注意が必要である。 BoLA-DRB3はBoLAクラスIIの中でもっとも多型に富み、機能的な遺伝子であり、我々はこの遺伝子のPCR-SBT法を世界に先駆けて開発した。この方法が大規模タイピングを行うために有効に機能するために、さらなる改良を加えている。
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