研究課題
本年度では、昨年度に引き続きピロプラズマ原虫Babesia gibsoniを1ng/mLのジミナゼン・アセチュレート(DA)存在下で培養し、DAに対する抵抗性を獲得する過程におけるB.gibsoniのheat shock protein70(hsp70)遺伝子発現量を1週間おきに観察したところ、hsp70の発現量はDAに曝されて1-2週間は低下し、抵抗力を獲得したと思われる3-4週間後には回復することが明らかになった。このことから、B.gibsoniがDAに対する抵抗性を獲得する上でhsp70は直接的な役割を担ってはいないが、B.gibsoniの生存に無関係であれば発現量が回復することもないと考えられ、抵抗性を獲得した後に増殖する上で必要な分子であることが推測された。同時に、hsp70遺伝子の発現量を比較するための内部標準として18S rRNAが利用可能かどうかを検討したところ、この分子の分子数はDAの有無にかかわらずほぼ一定であり、内部標準として利用可能であると考えられた。一方で、B.gibsoniの膜表面抗原分子であるTRAPについても内部標準としての可能性を検討したが、この分子はDAの影響を受けてその量が変化したため、内部標準としては利用できないことが明らかになった。また、昨年度作成した3ng/mLのDA存在下で増殖可能なB.gibsoniに対して100ng/mLまでDA濃度を順次増加させていき、それぞれの濃度におけるB.gibsoniのhsp70遺伝子発現量を観察した。その結果、DA濃度が1-75ng/mLまではその増加に伴ってhsp70発現量は増加し、100ng/mLではわずかに減少した。このことから、B.gibsoniが高濃度のDA存在下で増殖するためには大量のhsp70が必要であり、その生存に何らかの役割を担っていると考えられる。
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