研究概要 |
本研究は、ベクターであるサシチョウバエの唾液タンパクをリーシュマニア感染防御ワクチンとして応用するという新たな発想でのワクチン開発研究を行うことを目的とする。 これまでの研究で、アフリカに広く分布し、L.. majorを媒介するサシチョウバエ、P. duboscqiの唾液タンパクのプロテオーム解析および唾液腺のトランスクリプトーム解析を行い、唾液腺転写産物の80%程度が分泌タンパクで、うち80%以上はプロテオーム解析で確認された約10種類のタンパクで構成されていること、唾液タンパクの抗原性はサシチョウバエ種により様々であるが、同種内では地理的分布が隔離されている場合でもよく保存されていることを明らかにしてきた。この解析結果をもとにプロテオーム解析でも確認された10種類程度の主要タンパクと、それらのうち抗原性にバリエーションがみられたもの、合計20種類程度を選択し、全アミノ酸配列をコードする領域をタンパク発現ベクターに組み込みDNAワクチンを作成した。作製したDNAワクチン10μgを1週間おきに3回マウスの耳に接種した後、P. duboscgi唾液タンパクを耳に接種(チャレンジ)し、DTHを検討した。また、免疫後に血清も採取し、唾液タンパク特異的なIgG抗体についても検討した。その結果、免疫原性の高い抗原、低い抗原、細胞性免疫応答を誘導するもの、液性免疫応答を誘導するものなど、抗原により様々な免疫応答の誘導がみとめられた。これらのうち、15,42,44kDaの分子量を持つ3種類の抗原が宿主に強い細胞性免疫応答を誘導することを明らかにすることができた。今後はこれらの抗原が、宿主に感染防御能を誘導する抗原であるか、感染ターゲットであるマクロファージにどのような効果をもたらしているのかなどについて詳細に検討していきたいと考えている。
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