本年度は、各種ウイルスの増殖に適した培養細胞の作出を行った。 1)ウマヘルペスウイルスの増殖に適した細胞の作出を目的として、ウマ胎児腎臓由来初代培養細胞にSV40のラージT抗原を発現するプラスミドを導入した。その結果、不死化までは至らなかったが、40代にもわたる長期の培養が可能になった。この細胞はFHK-Tc13細胞と名づけた。 2)イヌ胎児腎臓由来初代培養細胞にSV40のラージT抗原を発現するプラスミドを導入し、100代以上の継代が可能なDKT細胞の作出に成功した。このDKT細胞は、イヌヘルペスウイルスの増殖を支持した。 3)イヌジステンパーの増殖に適した細胞を作出するため、イヌのSLAMを発現するプラスミドcSLAM/pDisplayを作出し、イヌ由来の培養細胞A-72とネコ由来培養細胞CRFKに導入した。その結果、二種類のA-72/cSLAMとCRFK/cSLAMが作出された。両細胞ともジステンパーウイルスの増殖を支持し、プラークアッセイを可能にした。 上記細胞を用いて 1)ウマヘルペスウイルス4型のウシ由来培養細胞MDBK細胞馴化株は、ヘパリンを用いて細胞へ感染できるように変異をおこしていることが分かった。また、ウマヘルペスウイルス4型のgBがヘパリン結合蛋白であることが示された。 2)イヌジステンパーウイルスの流行型の血清学的識別が可能になった。 3)ウマヘルペスウイルス1型は赤血球凝集活性を有しているのに対して、ウマヘルペスウイルス4型は赤血球凝集活性を有していなかった。これが、両者の病原性の違いに関与していると考えられた。
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