ラミニンは、基底膜におもに存在し、上皮と問質の結合を支持するとともに種々の細胞生物学的機能を有している。我々はラミニン-503鎖のLG4ドメインが、表皮細胞の遊走活性を持つことを示した。皮膚の基底膜を構成するラミニン-5が表皮-細胞間結合のみならず、ラミニン-5が皮膚の創傷治癒に重要な役割を果たしていることを示した。本研究で、角膜の基底膜を構成するラミニンが角膜の創傷治癒に寄与しているという報告からラミニンが有する創傷治癒促進作用を調べた。我々のグループの研究結果において、ラミニンのC末端のLG4ドメインに表皮細胞の細胞接着活性と細胞遊走活性を有することから、ラミニン-1における同部位をコードするAG73ペプチドを用いて角膜創傷におけるラミニンの生物学的活性と創傷治癒促進する新規薬剤の可能性を検討した。ヒトの角膜上皮細胞の細胞株に用いたIn vitroでのAG73ペプチドに対して化学走性を示した。また、その化学走性はp38MAPK依存性であった。In vivoでは、n-heptanolによるアルカリ創傷で作成した角膜潰瘍モデルにおいて、潰瘍作成後12時間で有意な創部の縮小が認められた。本実験で明らかになったように、ラミニン-1・1鎖C末端のLG4ドメインの生理活性部位をコードするAG73ペプチドがin vitroとin vivo誘導するという事実は、創傷治癒における、ラミニン-1の生物学的な意義を示唆し、AG73ペプチドがEvidence Based Medicineに合致する創傷治癒促進する新規薬剤の可能性を示すことができた。
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