昨年度までの結果より、凍結動態にSNAREタンパク質群、すなわち、シンタキシン、シナプトブレビン、SNAP-25様タンパク質を同定、もしくはマーカーとして利用することにより、凍結下における膜のダイナミクスが理解できるものと考えられた。本年度はまず、昨年度に引き続き、凍結融解過程における内膜系タンパク質の動態を理解するために、-10℃で凍結融解したシロイヌナズナより粗膜画分を分画した。昨年度作製した、低温馴化で増加すると予想されたSNAREタンパク質群に対する、それぞれの抗体を用いてイムノブロッティングを複数回行った。その結果、SNAP-25様タンパク質は統計学的に有意に凍結後に増加することが示された。また、統計学的な有意な差は見られなかったものの、シンタキシンとシナプトブレビンも凍結後に増加が観察できた。これらの変化は、凍結中の膜のダイナミクスの結果であると考えられる。次に、ショ糖連続密度勾配超遠心法により粗膜画分を分画し、細胞膜、ER、液胞膜、それぞれのマーカー抗体を用いて、SNAREタンパク質との比較を行った。その結果、まず、SNAP-25様タンパク質の位置は、どのマーカー抗体とも一致しなかった。次に、シナプトブレビンとシンタキシンの位置は、2つの画分に分かれ、一つは細胞膜画分に一致し、もう一つの画分は、SNAP-25様タンパク質の画分と一致した。次に、SNAP-25様タンパク質は他のSNAREタンパク質と複合体を作るため、粗膜画分を可溶化後、抗体カラムによりSNAP-25様タンパク質を精製し、SDS-PAGEにより結合タンパク質の確認を行った。その結果、SNAP-25様タンパク質以外に7本のタンパク質バンドが確認された。今後、TOF-MSで同定行う予定である。一方、本実験で作製したSNAREタンパク質抗体に反応すると予想されるシナプトブレビン(VAMP721、VAMP722、VAMP723)、SNAP-25様タンパク質(SNAP-33)、シンタキシン(SYP122)のT-DNA欠損株を単離し、これらを用いて、SNAREと凍結膜動態との関係を明らかにしていく予定である。また本年度は、本研究結果の一部をまとめた投稿論文が2報受理された。
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