研究課題
葉緑体に代表される色素体の存在は、細胞内共生説により説明される。葉緑体には3000種類以上のタンパク質が存在するが、葉緑体ゲノムにコードされている遺伝子はわずか100種類程度に過ぎない。残りの遺伝子は進化の過程で宿主の核ゲノムに移ってしまったため、葉緑体の分化は核遺伝子の発現により支配されていると言って過言ではない。一方で、葉緑体での活動で生じる様々な代謝産物は核へのシグナルとして働き、葉緑体自身も何らかの形で核遺伝子の発現をコントロールしていると考えられるが、その実体は不明である。本研究では葉緑体から核へのシグナル伝達を担う因子の同定を目指し、解析を行ってきた。本年度は、タンパク質輸送変異体を用いた網羅的遺伝子発現解析により、葉緑体形成阻害が核遺伝子発現に及ぼす影響と、これを核へ伝達するシグナル伝達因子を探索した。まず、タンパク質輸送阻害により引き起こされる葉緑体形成阻害は、核コードの光合成関連遺伝子の発現を特異的に抑えることが明らかになった。次に、網羅的遺伝子発現解析のデータからシグナル伝達因子を探索した。その結果、18個のポジティブ・レギュレーター候補因子と55個のネガティブ・レギュレーター候補因子を同定した。この結果は、同定したシグナル伝達候補因子が葉緑体シグナルに応答した光合成関連遺伝子の発現調節に関与していることを示唆している。
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Biochemical Journal (印刷中)(掲載確定)
Plant Physiology 144
ページ: 513-523