乾燥気候に適応した植物はしばしば深い地下系を発達させる。アフリカ・カラハリ砂漠に自生する野生種スイカは、栽培種スイカなど他の植物の根の伸長が阻害されるような厳しい乾燥ストレス条件下において、逆に根の生長を促進させ、地中深くの水分源に到達することで乾燥気候に適応している。乾燥ストレスに応答した根の伸長メカニズムを解明するため、野生種スイカの根における乾燥ストレス応答タンパク質をプロテオーム解析により網羅的に解析した。強光・乾燥ストレスを付与した野生種スイカの根から可溶性タンパク質を抽出し、二次元電気泳動により分離した。その結果、約1500個のタンパク質スポットが検出され、その中で乾燥ストレス付与1日目(初期増加型)および3日目(後期増加型)で強度が顕著に増加したスポットが、それぞれ35個、42個認められた。また、ストレスにより減少したスポットは14個検出された。Lq-MS/MSによる解析の結果、初期増加型には2つのRan GTPase(CLRAN)を含めた細胞分裂制御/細胞骨格関連因子や様々な代謝関連タンパク質が、後期増加型にはプロテアーゼ、ヒートショックタンパク質、活性酸素消去関連タンパク質などが含まれていた。以上の結果より、野生種スイカの根は乾燥ストレスの程度に依存してストレス回避および防御機構を誘導し機能させていることが示唆された。さらに、乾燥ストレス下での野生種スイカの根の発達におけるCLRANの役割について検討した。CLRANは主に根端の分裂および伸長領域で発現し、根端での発現量は乾燥ストレスにより約1.5倍に増加していた。さらに、CLRANを過剰発現させたシロイヌナズナは、コントロールに比べて根の生長が促進されることが判明した。さらにこの形質転換体は、浸透圧ストレス下において根の伸長を維持することが示された。これらの結果は、CLRANが乾燥ストレス回避のための根の生長促進機構において中心的な役割を果たすことを示唆している。
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