枯草菌由来転写因子であるLmrA、YxaF、およびYsiAはいずれもTetRファミリーに属するが、LmrAとYxaFはフラボノイドに応答性を示すのに対し、YsiAは長鎖アシルCoAを認識して標的遺伝子の結合領域から解離し、発現誘導を引き起こす。これらの転写因子のエフェクター認識部位を決定し、さらにエフェクター特異性を改変することを目指して種々の変異体を作製して解析を行った。 本年度は昨年度に作製した種々の変異体のDNA結合能やエフェクター応答性についてより詳細な定量的解析を行った。YsiAに関してCoA部分と作用すると予想されたR116、R150、R153、K173のそれぞれの残基をアラニンに置換した変異体を用いて、標的DNAとの結合能と長鎖アシルCoAに対する応答性をタンパク質やアシルCoAの濃度を変化させたゲルシフト解析によって評価した。その結果、いずれの変異体も野生型と同程度のDNA結合能とアシルCoAに対する応答性を示し、少なくともこれらの残基の1つが置換されてもYsiAの認識機能は影響されないことがわかった。またYxaFに関して、エフェクター分子と相互作用すると予想されたD75、F87、W131、F135、R137、K138、L139、E141をそれぞれアラニンに置換した変異体を用いて同様の手法にて標的DNAとの結合能とフラボノイド応答性を評価した。その結果、W131AとF87Aの変異体のDNA結合能は野生型よりも低下しており、これらの残基がDNA結合に重要であることが示された。また、F87A、F135A、L139A、およびE141A変異体では野生型とは異なるフラボノイド応答性を示した。これらの4残基は二量体形成ドメインの一部に集まって存在しており、フラボノイド認識ポケットの構成要素となっていることが考えられた。
|