ラクトフェリン含有コラーゲンゲル薄膜を作製するために、酸可溶化I型コラーゲンゲルを同容量のウシラクトフェリン含有MEM培養液と混和した後、低温で十分に乾燥させてゲルを乾固させた。この過程でゲルの厚みは5%以下に減少した。作製したラクトフェリン含有コラーゲンゲル薄膜をPBSで2回洗浄して平衡化させた後、37℃の培養条件下に3週間インキュベートした場合、MEM培養液中へのラクトフェリンの継続的な放出が観察された。一方、ゲル薄膜内に残存するラクトフェリンの量は著しく減少し、I型コラーゲンゲル薄膜によるラクトフェリン徐放化が確認された。 ヒト骨肉腫由来の細胞株であるMG63細胞の骨芽細胞への分化培養系を利用し、ラクトフェリン含有I型コラーゲンゲル薄膜の機能を評価した。ゲル薄膜上に播種したMG63細胞を骨芽細胞に分化誘導したところ、コラーゲンゲルへのカルシウム沈着量の継時的な増加が認められた。ウシラクトフェリンを最終濃度1μMで培養液に添加したところ、ゲルへのカルシウムの沈着が無添加区と比較して促進された。また、コラーゲンゲル薄膜上では、ラクトフェリンの細胞増殖促進効果は認められなかった。 ラクトフェリン含有コラーゲンゲル薄膜の上にMG63細胞を播種した場合においても、コントロールと比較してゲルへのカルシウムの沈着が有意に促進されていた。これらの結果からラクトフェリン徐放性のコラーゲンゲル薄膜と骨芽細胞から骨様組織が再生できることが示唆された。
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