植物のアントシアニン生合成系はMYB等の転写因子により誘導される。ブドウの果皮色の発現もMYB様転写因子により制御されていて、果皮の色調はアントシアニンの量と組成により決定される。一方、ブドウ果皮のアントシアニン生合成系酵素遺伝子の発現は、アブシジン酸(ABA)により誘導されることも分かっている。これらのことからブドウのMYB様転写因子やアントシアニン生合成系酵素遺伝子はABAにより誘導されている可能性が考えられる。したがってMYB様転写因子の発現の制御機構を明らかにすることは、ブドウの着色機構を解明する上で極めて重要であると思われる。 そこで、ブドウのMYB様転写因子であり、果皮の着色に関連が深いとされ、すでにクローニングされている黒色系ブドウのVvnybA1遺伝子のプロモーター領域の機能解析を行い、ABAからのシグナル伝達に関連するDNA結合タンパク質結合部位を明らかにし、ブドウの着色機構を解明することを本研究の目的とする。 H18年度はVvmybA1のプロモーター領域の解析を行うための準備として、長さの異なるプロモーター領域を持つVvmybA1をpBI121に導入し、数種類の発現ベクターを構築した。 H19年度以降は、作成した発現ベクターを利用して、アグロバクテリウム法でブドウ果皮における本遺伝子の一過性の発現をアントシアニンを合成する細胞を指標に調べる予定である。したがってH18年度は実験に用いる品種と実験方法を検討した。果実における一過性の発現は、これまでKobayashiら(2005)により行われていた方法でも観察可能であるが、本法を更に改良するため実験系を再検討した。具体的には35Sプロモーターの下流にVvmybA1のホモログを連結した発現ベクターを用い、果実の滅菌方法やアグロバクテリウムの感染条件などに改良を加え、従来より効率的にブドウ果皮における一過性の発現を観察することに成功した。
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