植物のアントシアニン生合成系を誘導する転写因子としてmyb様遺伝子があげられ、アントシアニン生合成系酵素遺伝子の発現はmyb様遺伝子によって制御されていることが一般的に知られている。ブドウには様々な果皮色を持つものがあるが、紫黒色系および赤色系ブドウなどの果皮色も、アントシアニン色素が蓄積することにより発現する。ブドウ果皮におけるアントシアニン色素の発現もまた、一般的な植物と同様myb様遺伝子により生合成が制御されている。さらにブドウ果皮のアントシアニン生合成はアブシシン酸により促進することも知られており、アブシシン酸によるmyb様遺伝子発現の制御機構なども含めてブドウの着色機構が解明されれば、ブドウの着色機構の全体像が解明されると予想される。 平成19年度は黒色系ブドウ‘ピノ・ノワール'から単離したVvmybA1遺伝子のプロモーター領域の長さが異なる発現ベクター数種類と、着色しない白色系ブドウ品種の果実を実験材料として用い、平成18年度に改良・検討した方法によりVvmybA1遺伝子の一過性の発現解析を行った。その結果、VvmybA1遺伝子の発現に重要な役割を担うと考えられるプロモーター領域を絞り込むことに成功した。 平成20年度は平成19年度と同様の手法で一過性の発現解析の追試を行い、統計的にも根拠のあるデータを得るとともに、アントシアニン生合成の鍵を握るとして特定したプロモーター領域に結合し、myb様遺伝子の転写を促進するタンパク質を同定するための実験に着手する。
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