研究概要 |
トリアルキルガリウムと塩化ガリウムを脱プロトン化試薬として用い、生じた有機ガリウム化合物に特徴的な反応性を利用する新しいC-C結合形成反応を検討した。 塩化ガリウムが1,4-エンイン3位メチレンC-H結合を脱プロトン化し、ジエチニル化できることがわかっている。この反応の触媒化を検討し、1-シリルアセチレンプロパルギル位の触媒的エチニル化反応を開発した。塩化ガリウム(5mol%)存在下、1,4-エンイン(2eq.)とクロロトリエチルシリルアセチレンを150℃で12時間作用させるとトリエチニルビニルメタンを与えた。塩化ガリウムによる脱プロトン化は1,4-エンインよりも酸性度の低い1-シリルアセチレンプロパルギル位C-H結合でも進行し、触媒的にエチニル化物を与えた。本反応は全てのプロパルギル位C-H結合の,エチニル化が一挙に進行することが特徴である。プロパルギル位にメチン、メチレンおよびメチル基を有する1-シリルアセチレンで反応を行うと、それぞれジエチニルメタン化合物、トリエチニルメタン化合物、およびテトラエチニルメタンを与えた。塩化ガリウムを用いることで、従来は多段階法で合成されていたポリエチニルメタン化合物を効率的に合成できることを示した。本反応によりルイス酸である塩化ガリウムが1-シリルアセチレンに対し塩基として作用できることが示された。触媒的な脱プロトン化の進行は一般にプロパルギル位C-H結合に用いられる有機リチウム塩基にはない特徴であり、塩化ガリウムの脱プロトン化試薬としての有用性を示す結果といえる。また、1-シリルアセチレンに塩化ガリウムを作用させると^13C-NMRにおいて2位のアセチレン炭素が55ppmと大きく低磁場シフトすることがわかった。塩化ガリウムと1-シリルアセチレとのπ-錯体形成により2位に電子不足な炭素が生じることを示す結果である。
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