研究概要 |
アグリコン部にspirostane-typeのステロイド骨格を有し、糖鎖部にβ-lycotetraosy1基を持つ配糖体に強いガン細胞増殖抑制活性があるという知見を礎として、より詳細な構造活性相関を調べ、活性に必要なファーマコフォアを明らかにするために、lycotetraosy1配糖体のアグリコン部分のライブラリー構築を行うことを企図した。以下に、平成19年度に得られた知見を記す。 1.糖供与体の合成・・・当研究室で展開しているtrans-glycosylation法を応用して、トマト萎凋病菌Fusarium oxysporumからtomatinaseを調製、トマト地上部由来のα-tomatineより74%の収率でlycotetraoseをオリゴ糖鎖として一挙に切り出した。得られたlycotetraoseはアセチル保護し、糖供与体(thioglycoside, fluoride, dipheny1 phosphate)に変換した。 2.アグリコンへのグリコシル化…7種のアグリコンとlycotetraosy1 thioglycoside体を用い、NIS、TMSOTfをpromotorとし-40℃にてグリコシル化反応を行った。その結果、16〜52%の収率で非天然型のα結合体として、対応するアグリコン部を有する配糖体を得た。 3.β選択性と収率向上の条件検討…Thioglycosideとtigogeninを用い反応温度を検討したところ、40℃に昇温すると、収率29%(α/β=1/5)でβ配糖体を得ることができた。また、糖供与体にfluorideを用いた場合、CP_2HfCl_2、AgClO_4をpromotorとして-40℃でcholesterolとグリコシル化したところ、α配糖体が78%と高収率で得られた。また、糖供与体にdipheny1 phosphateを用い、TMSOTfをpromotorとして-40℃でcholesterolと反応したところ、収率41%(α/β=2/1)でβ配糖体が合成された。以上のことから、α配糖体は、fluoride体を用いると高収率で得られる傾向にあり、β配糖体は、-40℃でdipheny1 phosphateを用いる、または、40℃でthioglycosideを用いることで生成するという知見が得られた。 4.得られたlycotetraosy1誘導体のガン細胞抑制試験・・・各種ガン細胞(A549,HepG2,LLC-PK1)を用いて、細胞増殖抑制試験を実施し、構造活性相関を検討した。同じアグリコンの場合、グリコシド結合がα結合に比べβ結合の配糖体の方が強い活性を持つことが判明した。また、アグリコン部はC27steroid骨格に比べcholestane骨格の配糖体に強い活性が有ることが推察された。
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