研究概要 |
今や国民病とも言われる花粉症は,代表的なアレルギー性疾患で,現在では日本人の20-30%が罹患していると推定されている.また,食事や飲酒などの食生活が疾病の発症・進展に関与する胃潰瘍や肝炎などの疾患も急増しており,これらの予防や初期段階の改善に様々なサプリメントや機能性食品が開発されている.しかしながら,これらのなかには科学的根拠が乏しいものがあるのも事実で,これらによる健康被害が社会問題となっている.その為,サプリメントや機能性食品素材についての物質科学的根拠(マテリアルサイエンス)に基づいた機能解明が急務であり,またそれらの活性成分を見いだすことで,新たな医薬シーズを提案することが可能となる.本研究は,香辛料として食用にも利用される薬用食品から,アレルギーやアルコール摂取による各種臓器障害に予防的あるいはその初期段階の改善に有用な機能性食品素材の提案をおこなうとともに,生物活性を指標に分離・精製し,NMRをはじめとした各種スペクトルの解析から活性成分および新規化合物の構造解析を実施する,今年度は,これまでに独自に実施した文献調査および予備的検討により選抜した約80種の香辛料由来の薬用食品素材の抽出エキスライブラリーについて,RBL-2H3細胞を用いたスクリーニング試験を実施し,抗アレルギー作用シーズとして有望な素材を探索した.その結果,日本食の食材であるフキについて,抗アレルギー作用を見い出すとともに活性成分の探索を実施した.また,同様にアルコール誘発胃粘膜損傷に対する保護作用を有する素材についても,ラットを用いたエタノール誘発胃粘膜損傷抑制作用試験(in vivo)を実施し,日本人に馴染み深い茶(チャ)から胃保護作用を有する新規サポニンを見い出すなど,今年度の当初計画をほぼ達成した.
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