(1)ヘリックス間相互作用におけるAsn間水素結合形成の熱力学。 ホスト配列(AALALAA)3の中心にゲストアミノ酸Asnを導入したペプチドのN末端NBD蛍光ラベル体を合成、精製し、このペプチドがPOPC脂質二分子膜中で安定な膜貫通ヘリックスを形成することを確認した。またこのペプチドを種々の濃度でリポソームに組み込み、0.35mol%程度の膜内濃度まで自己消光を起こさない、すなわちこの膜貫通ヘリックスが単量体あるいは逆平行型二量体で存在することを明らかにした。次に、逆並行型二量体形成の熱力学量を測定するためのC末端DABMIラベル体を合成した。DABMIラベルにより、これまで用いてきたHPLC精製条件でカラムから溶出しないことがわかり、今後フェニルカラム等を用いて精製条件の検討を行う。 (2)膜疎水部の物性がヘリックス間相互作用へ与える影響 コレステロールを30mol%含む膜POPC膜ではNBDラベル体の自己消光がより低濃度で起こり(0.15mol%程度)含コレステロール膜でヘリックス会合が強くなることがわかった。今後逆並行型二量体形成の熱力学量を測定し、詳細な議論を行う。 (3)ヘリックスの水溶性改善による水-膜間分配の測定 ホストペプチドのN末端に(RK)5配列を付加すると、緩衝液に溶解することが明らかになった。脂質ベシクル存在下では膜へも分配し、水-膜間の平衡状態にあると考えられる。ペプチドが水中でミセルを形成している可能性があるため、今後、cmcを測定するとともに、このヘリックスの水-膜間分配係数を決定する。
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