本研究の目的は、独自のDNA結晶化法により構造解析の効率を飛躍的に向上させ、核酸系薬剤のドラッグデザインへの基盤を確立することにある。当初の計画通り二年目は、(1)DNAの金属イオンによる構造変化の解析と、(2)ヘアピン型DNAの結晶化を行った。 (1)については、従来の結晶化法では得られなかった超高塩条件で結晶の作成に成功して、DNAと金属イオンの新しい相互作用を発見した。DNA d(CGCGCG)に対してCa2+またはMg2+を100:1以上の割合で加えると、未知の結晶が得られた。放射光Spring-8でX線実験を行ったところ、この結晶内ではDNAが直鎖状に連なっており、隣り合ったDNAの鎖間にCa2+やMg2+がはまり込んで接着剤の役割を果たして三次元の構造を形成していることが明らかになった。この発見は、DNAの高密度保存についての大きな手掛かりになると共に、DNA薬剤を高塩下で加工して用いる際の有用な情報と期待できる。 (2)については、ヘアピン構造を持つと予想されるd(GCGAAAGC)および、そのヘアピンの核の部分を抽出してd(CGAA)の両方の結晶化を行った。両方について結晶が析出し、特にd(CGAA)についてはDNAの結晶であることが確認できた。20年度においてX線測定を行い、立体構造を決定する予定である。 以上の結果は、本研究の特色である温度制御による結晶化法によって初めて可能となったものであり、本法の有効性を示すものである。また、この結晶化と解析の技法は、より広範なX線結晶解析にも応用できると思われる。この結果、タンパク質解析や中性子線解析でも副次的な成果を得ることができた。
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