申請者は、ゾル-ゲル法によって調製されるシリカ系高含水ゲルを利用して生体物質複合体を固定化すする手法を開発した。コロイド状シリカゲルとケイ酸ナトリウムを原料とすることによりアルコールの発生を防ぐ高含水ゲルの調製法を開発し、有機溶媒等により変性、失活し易い生体物質の固定化が可能となり、本法の可能性を大きく広げることができた。今年度は、我々がこれまでに開発した各種タンパク質固定化システムの創薬研究への応用・実用化研究、及びより優れた測定法の開発を行った。具体的には、シトクロムP450(P450)固定化素子の開発に関する研究を行った。異なる粒子径を有する種々のコロイド状シリカゲルを原料として作成した高含水ゲルを用い、P450を固定化し、その薬物代謝活性を測定した。その結果、粒子径の大きいコロイド状シリカゲルで作成したゲルほど包含したP450の活性が高かった。また、P450を固定化した高含水ゲルを動的光散乱、電子顕微鏡により解析し、調製条件が高含水ゲルの物性に与える影響を調べた。ゲル生成の過程を動的光散乱法を用いて追跡したところ、粒子径の大きいコロイド状シリカゲルを用いた方が、急激な散乱強度の増加が起き、生体物質と混合後、その強度が極大に達する時間が短かった。一方、液体のゾル状態から、固体のゲルへと相変化する時間(ゲル化時間)は、粒子径の大きいコロイド状シリカゲルを用いた方が長かった。さらに、今回、ミクロソームがゲルに包含されている状態を透過型電子顕微鏡を用いて三次元的に観察することに成功した。以上の結果より、粒子径の大きいコロイド状シリカゲルを用いると、ゲル化がゆっくり進行し、また、より間隙の大きい網目構造ができることにより、固定化されたP450の活性がより維持されたと考えられる。
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