神経細胞傷害時における神経-細胞外マトリックス(ECM)-グリア細胞間相互作用の役割を明らかにすることを目的として、大脳皮質および線条体領域から作製した脳スライス培養系を用いて、以下の検討を行った。平成18年度の研究から、NMDAによる神経細胞傷害時に、マトリックスメタロプロテアーゼの1つ、MMP-9の活性が上昇することが明らかとなっていることから、NMDAによるMCP-1産生に対するMMP-2/MMP-9阻害薬SB-3CTの効果を検討したが、SB-3CTはMCP-1産生に対して、影響を与えなかった。このことから、NMDAによる神経細胞傷害時におけるMCP-1産生へのMMP-2/MMP-9の関与は小さいことが示唆された。また、様々な刺激によって細胞内外で生成する過酸化水素(H_2O_2)が、脳内での細胞間あるいは細胞-ECM間の相互作用を担っている可能性について検討するため、脳スライス培養系を用いて、H_2O_2による細胞傷害およびケモカインMCP-1の産生について検討した。H_2O_2は濃度依存的に細胞傷害およびMCP-1の産生を惹起し、主なMCP-1産生細胞はアストロサイトであった。さらに、MAPキナーゼの関与を検討したところ、H_2O_2によるMCP-1産生は、部分的ではあるもののMEK阻害薬U0126によって有意に抑制されたことから、MEK-ERK系の関与が示唆された。本培養系での神経細胞傷害時におけるH_2O_2の生成量やそのタイムコースなどの詳細については、今後の検討課題である。
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