研究課題
PC12D細胞においてNobiletinよりも強力なERK/CREBシグナル伝達活性を有する事が明らかとなっているNobiletin誘導体G010について、初代培養海馬神経細胞におけるPKA/ERK/CREBシグナル伝達活性の検討を行った。G010は初代培養海馬神経細胞において、濃度依存的に記憶・学習に重要なシグナル分子であるPKA基質、ERKおよびCREBのリン酸化を促進した。また、G010は初代培養海馬神経細胞においてCRE依存的転写活性を促進した。さらに、G010はβアミロイドペプチド(Aβ)によるグルタミン酸誘発性PKA基質およびCREB活性化の阻害を顕著に改善した。さらに、G010(50 mg/kg, i.p.)をddY系雄性マウスに一週間連続投与する事により、MK-801誘発性恐怖記憶・学習障害にたいして50-70%程度の改善効果が見られた。また、恐怖条件付け試験訓練1時間後の海馬サンプルにおいてERK1/2のリン酸化は150%程度上昇していた。この訓練によるERK1/2の活性化は記憶形成に重要であるとされており、MK-801の処置によりこの上昇は抑制された。G010を一週間連続投与した群においてはこのMK-801によるERK1/2の活性化抑制作用は完全に緩解されていた。以上の結果より、Nobiletin誘導体G010はPC12D細胞だけでなく、初代培養海馬神経細胞においても強力なPKA/ERK/CREBシグナル伝達活性を有し、Aβによる毒性発現を抑制する可能性が示唆された。また、G010のMK-801誘発性記憶障害改善効果には海馬ERKの活性化が関与している事が示唆された。
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J. Pharmacol. Exp. Ther. 321
ページ: 784-790
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