1.マウスFM3A細胞内のポリアミン量を枯渇させることによって増殖阻害を引き起こした条件でプロテオーム解析を行い、減少するタンパク質を複数同定した。また、これらのタンパク質のmRNA量は変化しなかった。そこで、同じ条件の細胞抽出液を用いてWestem blottingを行った結果、いくつかのタンパク質の量的低下を確認した。細胞内ポリアミン量の減少によって合成低下を示したタンパク質について、その翻訳調節機序に関する検討を行っている。 2.細胞周期に対するポリアミンの役割を検討した結果、細胞内ポリアミン量減少によりG1からS期への移行阻害が見られ、CDKインヒビターであるP27^<Kip1>が安定化したために蓄積することを明らかにした。そこで、ユビキチンープロテアソーム経路によってp27^<Kip1>を分解する際に必要なユビキチンリガーザE3であるKPC1、KPC2及びSkp2量をWestern blottingで調べたところ、Skp2量のみ低下が認められた。また、Skp2 mRNA量も低下しており、ポリアミンがSkp2の発現量を転写レベルで調節している可能性が示唆された。 3.ポリアミンによって活性調節を受けるNMDA受容体に対して、アントラセン(Ant)及びアントラキノン(AQ)ポリアミン誘導体によるチャネル阻害作用を検討した。アミノ酸を置換した多くの変異NMDA受容体を用いて検討を行った結果、Ant-及びAQ-ポリアミン誘導体によるチャネル阻害作用は相互作用するアミノ酸部位が異なり、阻害メカニズムが違うことを明らかにした。
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