3型コラーゲナーゼの骨代謝における役割を明らかにすることを目的とし、遺伝子欠損マウス(MMP13KOマウス)を用いて骨吸収と骨形成への本酵素の影響を調べた。新生仔の両マウスより頭蓋骨を無菌的に採取し、代表的な骨吸収因子である副甲状腺ホルモン(PTH)の存在下あるいは非存在下で器官培養を行った。その結果、野生型(WT)マウスの培養系において、ゼラチナーゼであるMMP2とMMP9及びMMP13の発現上昇に伴ない骨吸収活性の著しい上昇が認められた。一方、MMP13遺伝子欠損マウス由来頭蓋骨の培養系ではMMP13タンパクの発現は認められず、MMP2及びMMP9の発現上昇はWtマウス由来の培養系と同様に認められた。さらに培養後の培養上清のカルシウム値を測定することにより骨吸収活性を検討した結果、PTH処理による骨吸収活性はWTマウスの頭蓋骨培養系と比較して顕著に抑制された。従って、MMP13が欠損すると骨吸収が起こりにくいと考えられる。また、培養系において、IL-1など骨吸収因子により誘導される破骨細胞の形成はMMP13KOマウスの培養系では低下していた。一方、骨形成については、石灰化に着目して検討した。MMP13KOマウスおよび野生型マウスより骨芽細胞を採取し、アスコルビン酸存在下で培養した。経日的にアルカリフォスファターゼ染色を施し、骨芽細胞の分化と骨形成能を観察した。MMP13KOマウスの骨芽細胞は培養7日以内のアルカリフォスファターゼの染色性が強く、その後の培養10日以降では、骨結節を形成する石灰化が進展しやすいという結果を得た。これらの結果は、MMP13が欠損していると骨芽細胞の分化と石灰化が促進されて骨形成が促されることを示唆しており、MMP13KOマウスにおける骨量増加の一因であると考えられる。
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