近年、我が国を含め先進国各国において、肥満を主な原因とする糖尿病、高血圧症、高脂血症等の生活習慣病が大きな社会問題となっている。肥満の形成には、前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化が大きく寄与している。申請者らはこれまでに、脂肪細胞分化に重要な役割を担う因子群を数多く単離し、それらの機能を解析してきた。本研究では、その中の一つである新規遺伝子fad(factor for adipocyte differentiation)104についてノックアウトマウスを作製し、生体内におけるfad104の機能の解析をめざした。fad104ホモ欠損マウスを樹立した。その結果、fad104ホモ欠損マウスは出生直後に死亡することを明らかにした。この結果より、fad104が生命維持に必須な因子であることが示唆された。また、fad104ヘテロ欠損マウスと野生型マウスを用いた検討から、fad104が脂肪組織の形成に重要であること、さらにインスリンに対する感受性を負に制御する機能を有することを見い出した。さらに高脂肪食負荷により肥満を誘発させた検討により、fad104が肥満形成とインスリン抵抗性の惹起に関与することを明らかにした。これらの結果は、fad104が肥満の形成とインスリンのシグナル伝達機構に極めて重大な影響を与える因子であることを示唆している。これまでの検討により、これまで不明であったfad104の機能が明らかになりつつある。さらなる解析により、fad104の肥満および糖尿病に与える影響について明らかにしていきたい。
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