スペルミジンやスペルミンに代表されるポリアミンは、細胞増殖などに関わる生体内物質である。スペルミン合成酵素遺伝子に変異を有するシュナイダー・ロビンソン症候群に精神遅滞、骨粗鬆症などの症状があり、またスペルミン合成酵素遺伝子及び低リン血症原因遺伝子欠損Gy雄マウスには、低リン血症、低体長、低体重などの特徴が見られる。以上のようなスペルミン減少に伴う表現型を鑑み、ポリアミンの生理的役割を探索する一環として、細胞レベルではポリアミン類縁体の軟骨前駆細胞分化に及ぼす影響を調べることを、今年度の本研究の目的としている。 軟骨前駆細胞ATDC5を用い、ポリアミン関連酵素阻害剤などのポリアミン類縁体を培地に添加し、細胞内ポリアミン濃度を変化させ、その石灰化に及ぼす影響を、アリザリンレッド染色、アルシアンブルー染色を指標に評価した。その結果、細胞内スペルミジンを減少させ、スペルミンを増加させるスペルミジン合成酵素阻害剤MCHA(trans-4-Methylcyclohexylamine)は、石灰化を抑制することがわかった。一方、細胞内スペルミンを枯渇させ、スペルミジンを増加させるスペルミン合成酵素阻害剤APCM(N(3-Aminopropyl)cyclohexylamine)は、石灰化を促進させることがわかった。現在、阻害剤によるポリアミン量の変化が分化過程にどのような影響を及ぼすのか詳細に検討しているところである。
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