スペルミジンやスペルミンに代表されるポリアミンは、細胞増殖などに関わる生体内物質である。ポリアミンに関わる疾患例としてスペルミン合成酵素遺伝子に変異を有するシュナイダー・ロビンソン症候群があり、その症状に骨粗鬆症、精神遅滞などがある。本研究では骨・軟骨代謝におけるポリアミンのモジュレーター機能解析を目的とし、軟骨前駆細胞ATDC5を用いて平成18年度ではポリアミン関連酵素阻害剤などポリアミン類縁体を培地に添加し細胞内ポリアミン濃度を変化させ、その石灰化に及ぼす影響を調べた。その結果、細胞内スペルミジンを減少させスペルミンを増加させるスペルミジン合成酵素阻害剤MCHA(trans-4-Methylcyclohexylamine)は、石灰化を抑制することがわかった。一方、細胞内スペルミンを枯渇させスペルミジンを増加させるスペルミン合成酵素阻害剤APCHA(N-(3-Aminopropyl)-cyclohexylamine)は、石灰化を促進させることがわかった。今年度はポリアミンの軟骨細胞石灰化に影響を与える因子を調べるため、分化マーカータンパク質のmRNAレベルにおける発現量を解析し、ポリアミンの標的分子を探索した。その結果、APCHA、MCHAそしてスペルミジンの投与後1週間目又は2週間目において、BGP、Col2、SQX9そしてRunx2のいずれかにおいてタンパク質のmRNA発現レベルが変動することがわかった。この結果は、ポリアミンが軟骨細胞化関連タンパク質の発現量に影響を及ぼすことにより、軟骨細胞の石灰化に影響を与えることを示唆するものである。
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