スペルミジンやスペルミンに代表されるポリアミンは、細胞増殖などに関わる生体内物質である。スペルミン合成酵素遺伝子に変異を有するシュナイダー・ロビンソン症候群に精神遅滞、骨粗鬆症などの症状があることが報告されている。また、スペルミン合成酵素遺伝子及び低リン血症原因遺伝子を欠損したGy雄マウスには、低リン血症、低体長、低体重などの特徴が見られる。以上のようなスペルミン減少に伴う表現型を鑑み、ポリアミンの生理的役割を探索する一環として、平成20年度では、スペルミン合成酵素遺伝子改変マウスを用いることにより、ポリアミンと骨・軟骨代謝との関連を調べた。 正常マウス、スペルミン合成酵素遺伝子及び低リン血症原因遺伝子欠損のGy雄マウス、スペルミン合成酵素過剰発現マウス及びスペルミンを回復させたGy雄マウスの4種類のマウスの大腿骨の比較評価を行い、ポリアミン量の変化によって生じた差異を解析した。その結果、骨・軟骨代謝に重要な役割を果たすことが知られているオステオポンチン、VEGF及びその受容体タンパク質などの抗体を用いる免疫組織化学的染色法などにより、発現量、発現パターンに差異が認められた。 以上のことから、本研究によりスペルミンまたはスペルミジン量が変化することにより軟骨代謝・骨代謝が影響を受けることを初めて示唆することができた。
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