D-アスパラギン酸オキシダーゼ(DASPO)は、酸性D-アミノ酸を分解する生体内酸化酵素である。マウスDASPO(mDASPO)、およびN末端にHisタグが付加されたmDASPO (His-mDASPO)の組換え体を大腸菌発現系において調製し、各組換え体の性質決定および変異体解析を行った。 1.組換え体の性質決定 両組換え体のD-Aspに対する活性は、補酵素FADを酵素反応液から除くことによりほぼ完全に失われた。また、本活性はDASPO阻害剤であるマロン酸およびmeso-酒石酸により特異的に阻害された。さらに、両組換え体の活性はD-AspおよびN-メチル-D-Asp(NMDA)特異的であり、他のD-およびL-アミノ酸に対する活性は非常に低レベルであった。これらの結果から、mDASPOは既知の哺乳類DASPOと類似した酵素学的性質を持つことが明らかになった。 2.His-mDASPO変異体の機能解析 ホモロジーモデリング法により、mDASPOの推測三次構造を構築した。活性部位に位置することが予測されたArg-216、Arg-237、およびSer-308残基に着目し、site-directed mutagenesisにより計10種類のHis-mDASPO変異体を作成した。Arg-216をMet、Ala、Glq、およびLeuに置換した変異体、およびArg-237をMet、Ala、Glu、およびTyrに置換した変異体は、いずれもD-AspおよびNMDAに対する活性が有意に低下していた。一方、Ser-308をGlyに置換した変異体、およびSer-308とGly-309をそれぞれGlyとTyrに置換した変異体は、いずれも両基質に対する活性が有意に上昇していた。これらの結果から、Arg-216、Arg-237、およびSer-308がmDASPOの機能発現に関与していることが示唆された。
|