研究課題
本研究は、平滑筋細胞特異的接着斑蛋白Hic-5が生体内で正常、および動脈硬化病変部の血管平滑筋細胞で高い発現を示すことや、血管病変の誘因にもなりうる機械的伸展ストレスに応答して細胞内での局在場所を変化させる点に着目し、Hic-5の病変部脱分化型平滑筋細胞特有の形質への積極的な関与の有無を明らかにすることを目的とした。解析はin vitro、in vivoの両方を同時進行で行っている。平成18年度は、まずin vivoで動脈硬化病変部位の新生内膜肥厚形成へのHic-5関与の有無を検討した。方法は、ラット頚動脈ヘバルーン血管障害モデルの手術を行う際にアデノウイルスベクターを用いて血管壁の細胞にhic-5遺伝子を発現させ一定期間飼育後、施術血管を摘出し新生内膜肥厚度の変化を検討した。その結果、Hic-5の強制発現により病変組織である新生内膜の肥厚抑制が観察され、Hic-5の動脈硬化病変形成過程への関与が示された。この結果からHic-5が生体で実際に血管病変部新生組織の形成度を変化させる能力を有する分子であると考えられる。さらに、in vivoで観察した現象を細胞レベルで説明するために培養細胞内のHic-5蛋白レベルをsiRNAを用いて抑制したところ、Hic-5が病変部の脱分化型平滑筋細胞の特性である細胞遊走能制御に関与することが、3次元コラーゲンゲル遊走実験から明らかとなった。また血管病変部新生組織を構成する細胞内でのHic-5の詳細な局在を免疫電子顕微鏡法により観察したところ、正常組織の平滑筋細胞に比べて核内に多くHic-5が検出された。このことからHic-5が新生内膜形成度を変化させるメカニズムとして、病変部の細胞核内で機能して細胞の遊走能を変化させる可能性が考えられた。さらに本年度はHic-5遺伝子のホモターゲティングマウスが完成し、来年度はこのマウスも解析に用いる。
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Oncogene (In press)
J Biol Chem 281(31)
ページ: 22048-22061