研究概要 |
本年度はビタミンD代謝酵素であるCYP2R1の精巣における役割を明らかにする目的で、精巣由来細胞を用いたビタミンD代謝物産生能の評価およびビタミンD化合物が精巣由来細胞の増殖に及ぼす影響について検討した。 1.精巣由来細胞におけるビタミンD代謝物産生能と性ホルモン応答性の検討 CYP2R1およびCYP27B1が発現しているマウス精巣由来細胞(TM3、TM4)の培養液中にvitamin D_3を添加し、24時間培養後の代謝物を分析した結果、25(OH)D_3が産生することを確認した。また、25(OH)D_3生成量はテストステロン、エストラジオール共存下で増加した。これらの知見は、精巣組織内においてCYP2R1が性ホルモン応答性のビタミンD代謝に関与することを示すものである。さらに、TM3およびTM4細胞を25(OH)D_3共存下で培養した場合には、活性型ビタミンDである1α,25(OH)_2D_3が産生した。 2.ビタミンD化合物が精巣由来細胞の増殖に及ぼす影響 1の代謝実験と同様のTM3およびTM4細胞を用いて、25(OH)D_3、1α,25(OH)_2D_3および既に臨床応用されているビタミンD誘導体22-oxa-1α,25(OH)_2D_3(OCT)が細胞増殖に及ぼす影響について検討した。その結果、ライディッヒ細胞由来のTM3細胞については用量依存的な増殖抑制効果が認められたが、セルトリ細胞由来のTM4細胞についてはビタミンD化合物を添加しても細胞数に変化は認められなかった。以上より、精巣組織内で産生した25(OH)D_3や1α,25(OH)_2D_3はライディッヒ細胞の増殖を制御していることが示唆された。
|